完了しました
ケンカは日常茶飯事、バイクで暴走……。不良、いわゆるヤンキーが登場する漫画の人気が続いている。現実社会では姿を見かけることが減ったヤンキーも、フィクションの世界では今なお、多くの読者を引きつけている。(川床弥生)
『東京卍リベンジャーズ』4000万部
今、最も熱いヤンキー漫画といえば、講談社・週刊少年マガジンで連載中の『東京卍リベンジャーズ』(東リベ)だ。2017年に連載が始まり、今年、アニメ化、実写映画化で人気が急上昇し、4000万部(電子版含む)を突破した。
26歳の主人公・花垣
作者の和久井健さんは04年のデビュー。今作は担当編集からヤンキー漫画を打診され、「一度は『最近の若いヤンキーのことはわかんないですよ』と断った」という。すると編集者から「ならば、わかる時代にタイムリープする漫画に」と提案され、「ヤンキー要素とタイムリープ要素が組み合わさった『東リベ』の形が出来ました」。
ヤンキー漫画では王道の不良チーム同士の抗争を描きつつ、タイムリープによる急転で先が読めない展開、さらに魅力的なキャラクターで読者の心を捉える。東卍の総長マイキー、ドラケン、三ツ谷、
和久井さんはそれぞれにこだわりがあるといい、「マイキーでいえば、とにかくハンサムでかっこよく。主人公の武道は逆に、泥くさくて読者が共感できるような等身大なヤツに描こうとしています」。最新24巻の発売時、単行本に各キャラのイラストカードを付けると、あっという間に書店からなくなった。
「『マガジン』のヤンキー漫画が昔から大好きで、その流れを自分が受け継ぐことが出来ているんだとしたらとてもうれしいです」と和久井さん。
『ヤンキー君と白杖ガール』、どちらも「少数派」
一方、ヤンキーを主要人物にしたことで、物語に深みが増した漫画もある。ヤンキーの
だが、物語を描き進めるうちに気付く。「顔の傷も含め、少数派で社会から偏見をもたれやすいところ、社会が決めた『フツウ』からはみ出ているところが、障害のあるユキコとマイノリティーという意味で同じ立場にあると感じたんです。そこから様々なエピソードが生まれていきました」
森生は一目ぼれしたユキコのため、障害について学び、支えるようになる。「一方的に守ったり救ったりする王子様ではなく、森生自身も傷を抱えているため、お互いに支えあい、お互い世界を広げあう関係にできたのがよかった」。現在、テレビドラマも放送中で、キュンとする物語に注目も高まっている。
弱さや疎外感に共感も
ヤンキー文化に詳しい五十嵐太郎・東北大教授は「現代ではヤンキーはファンタジー的な存在。キャラクターの悪さや奔放さが物語の原動力となり、大衆文化に定着した。一方、彼らの弱さや疎外感が描かれることも多く、生きづらさを抱えている人々に、現代的な共感をもって受け入れられるのだろう」と分析している。