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ダディー・ヤンキーが世に知らしめたレゲトンとは、一体どんなジャンルなのか…

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

5月23日(月)のオンエアでは、「カリブの風を感じろ! レゲトン入門」をテーマにお届け。ゲストに、音楽ライターの村上ひさしさんが登場。
村上さんは、海外の音楽・映画などのエンタメ系情報を、音楽誌、女性ファッション誌、ウェブなどを中心に執筆。ダディー・ヤンキーの前作やJ.バルヴィンなどのCDライナーも書いている。

■電撃引退を発表した「ダディー・ヤンキー」

電撃引退を発表した「キング・オブ・レゲトン」ダディー・ヤンキー。30年間、8枚のスタジオ・アルバムを発表してきたレゲトン界の帝王。3月にラストアルバム『レジェンダディー』をリリースしたダディー・ヤンキーは、ツアーをし引退することを発表。
そんな彼が世に知らしめたレゲトンとは、一体どんなジャンルなのかを特集。

あっこゴリラ:このレゲトンという音楽は、どんな音楽なんですか?
村上:80年代から90年代にアメリカのヒップホップの影響を受けたプエルトリコ人によって生み出された音楽です。
あっこゴリラ:私も以前アフリカ大陸に行ったことあるんですけど、どこに行ってもレゲトンがかかってますよね。
村上:そんな感じですよね。クラブに行かないとかかっていないようなクラブミュージックではなくて、生活に入り込んだ音楽って感じですね。
あっこゴリラ:うんうん。
村上:先ほどプエルトリコで生まれたと言いましたが、世界的に人気のあるジャマイカのレゲエに対抗して、アップテンポでダンスホールで楽しめるようにした音楽ですね。
あっこゴリラ:やはりアイコンになっているのは、ダディー・ヤンキーなんですか?
村上:はい。間違いないですね。ダディー・ヤンキーが、「レゲトン」という名前を付けたと言われています。それまでもこういうリズムの音楽はあったし、アーティストもいたんですけど、レゲトンを決定づけたのはダディー・ヤンキーの『Gasolina』ですね。

村上:この曲は、初めて聴く人もすぐ歌えちゃうんじゃないかってくらいキャッチ―ですよね。
あっこゴリラ:うんうん。日本はこれで止まっちゃってるところあるかも。
村上:これがレゲトンの代表曲になっちゃって、レゲトンとして初めてラテン・グラミー賞の最優秀レコード賞にノミネートされたのもこの曲なんですよ。だから行くところまで行っちゃったかなって感じですね。
あっこゴリラ:なるほど~。日本では、レゲトンといえばこの曲みたいな人も多いかと思うんですが、2004年の作品なんですね。その後は、ジャンル的にはどんな動きがあったんですか?
村上:レゲトンって、少し女性蔑視な歌詞もあって時代に合わず敬遠され、その後世界的には下火になります。しかし、最近になって新しい人たちがもっと新しいスタイルで、そういう部分を排除して作り始めて再ブームがきました。それが昨今のラテンブームにもつながっているとも言えます。
あっこゴリラ:世界的にもレゲエ要素、ラテン要素、レゲトン要素がどんどんミックスされてる動きを感じますが、歌われている曲の言語が英語ではないですよね?
村上:そうなんです。ほとんどがスペイン語で、自分たちの言葉で歌っているんですけれども、英語圏でぜんぜんOKなんですよね。すごく不思議ではあるんですけど、今の若い子たちはスペイン語でそのまま歌っていますね。
あっこゴリラ:今のK-POP的な感覚に近いですね。

■レゲトンが日本に浸透しない理由

再ブームのきっかけは、2017年の『デスパシート』だったと村上さんは言う。その後、どうようにして昨今のラテンブームにつながっていったのか。

村上:この『デスパシート』は、レゲトンというよりは、普通にラテンとして聴いてた人が多いと思いますね。
あっこゴリラ:確かに。あと、フックがジャスティン・ビーバーでポップスな感じもあるから入りやすいのもあるかも。では、どうして日本には浸透しないんだと思いますか?
村上:いくつか理由はあると思うんですけど、日本でこういう音楽を聴くシーンって日常的にあまりないっていうのは大きいと思います。つまり、音楽の使い方が違うのかなって。
あっこゴリラ:なるほど。
村上:掃除とか料理とかしながら聴いたら楽しいんですけどね(笑)。
あっこゴリラ:このビートにノッてやったらそうとうファンキーよ! あははは。でも、そのハードルが高いのかも。
村上:ですね。あとは、ラテンって一括りになってるけど、国にしたらメキシコ、ブラジル、コロンビア、アルゼンチンなど多すぎるじゃないですか。
あっこゴリラ:確かに。
村上:だから、音楽の向こう側にあるカルチャーが見えてこないっていうのもあるのかも。
あっこゴリラ:それはあると思う。HIPHOPとかとまた違いますよね。でも、言うてもレゲトンってまだ歴史が浅いですもんね。
村上:そうですね。これからしばらく続くんじゃないかなって思いますね。

■ダディー・ヤンキーの後継者たち

ここからは、引退を発表したダディー・ヤンキーの引退にについて、そして、今後のレゲトンシーンについて伺った。

あっこゴリラ:単刀直入に、ダディー・ヤンキーはなぜ引退すると思われますか?
村上:後継者が育ってきたっていうのが大きいのかなと勝手に想像していますけど、当人が引退宣言みたいなのはしたけど、ちゃんと説明をしていないんですよね。ちょっともったい付けてるのかなって気もしますけど(笑)。
あっこゴリラ:あははは。ダディー・ヤンキーは、「レゲトンのジャンルを世界に広めたのは僕だと言われてるけど、世界最大規模にするための扉を開く鍵をくれたのはみんなだよ」というコメントをしていますが、これは?
村上:これは、アルバムリリースのタイミングで言ったコメントだと思います。
あっこゴリラ:そんな今回のアルバムは、どんな作品になっているんですか?
村上:もちろんレゲトンも入っていますけど、それ以外にも自分が今までやってきたスタイルをすべて収録しているような集大成のようなアルバムになっていると思います。

そんなダディー・ヤンキーの後継者たちには、どんなアーティストがいるのか。

村上:まず紹介したい楽曲が、まさにレゲトン界重要人物が勢揃いの2019年のナンバー『China』です。参加メンバーのAnuel AAは刑務所に入っていたんですけど、刑務所を出てきたお祝いソングのような意味合いもあって、みんなで集まろうみたいな(笑)。
あっこゴリラ:へえ~!
村上:彼が出所して初めて出したアルバムに入っていてヒットした曲ですが、彼以外にカロルGやOzuna、J.バルヴィンなど5人が参加しています。
あっこゴリラ:5人でマイクリレーみたいなことですか?
村上:そうそう。ちなみに再生数18億越えのこのMVをぜひ見てほしいです!エンタメ満載で、映画で言うと『アベンジャーズ』みたいな感じの構想で作ったんだと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。
村上:聴くとわかるんですけど、サウンドもちょっと変わってきていて、EDMっぽさもあったりして進化系な感じですね。

なかでもダディー・ヤンキーの跡を継ぐのは、「J.バルヴィン」だと村上さんはい言う。

あっこゴリラ:今、J.バルヴィンがレゲトンで一番イケイケと言っても過言じゃないですか?
村上:そうですね。ダディー・ヤンキーがしばらく大人しかったときに、レゲトンを復活させた人って感じかな。レゲトンのシーンを守って、活性化してきた、とにかく「レゲトン愛」がすごいんです。
あっこゴリラ:良いですね~。
村上:もちろんアメリカで大人気なんですけど、スペイン語以外では歌わないという強いポリシーを持っていて。ビヨンセやカーディ・Bなどいろんな人とコラボしてるんですけど、絶対スペイン語なんですよ。
あっこゴリラ:そこは強いこだわりなんですね。
村上:あと、コロンビアの人なんですけど、地元から出ない(笑)。
あっこゴリラ:おお~! でも、HIPHOPもそうだけど、レゲトンもそういうイメージありますね。

そんなJ.バルヴィン、今かなり話題の「ロザリア」ともコラボしている。ロザリアは、スペインのシンガーソングライター、そしてポップアイコン。ビリー・アイリッシュやウィークエンド、トラヴィス・スコット、ハリー・スタイルズなども彼女とコラボしている。

あっこゴリラ:このサウンドもかなり進化系ですよね。
村上:めちゃめちゃ洗練されてますよね。
あっこゴリラ:すごいかっこいい! ロザリアは、アルカともコラボしてましたよね。
村上:はい。ロザリアって、スペインなのでもともとフラメンコがベースにあるんですよ。同じラテン系だっていうのもあるんですけど、レゲトンに目覚めたって感じですね。それをフックアップしたのがJ.バルヴィンっていうのもすごいなって思います。
あっこゴリラ:レゲトンがどんどん進化していって、それがいろんな音楽シーンに溶け込んでおもしろいエッセンスとなって音楽を発展させている感じがしますね。
村上:そうですね。あえて“この曲がレゲトンの曲”って言わなくなってきていますよね。


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【番組情報】J-WAVE 81.3FM『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 22時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/








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